大自然の摂理と、経済合理性(後篇)

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 どんなにすごい上昇相場でも、いつかどこかでは高くなりすぎた状態を是正しようとする力が働き始めて、大崩れに転じる。

 そのきっかけは、なんでもいい。 はっきりしているのは、買い方の間で「ずいぶんと上がった。 どこかで天井を打って下げに転じるだろう。 その前に売っておかなければ」という警戒心が高まってくることだ。

 そういった警戒心は、相場水準が高くなればなるほど、大きくなる。 ちょうど、稲の穂が実れば実るほど重くなって、下に垂れるのと同じである。

 そして、どこかで耐え切れなくなって、ドサッと崩れに転じる。 上がったものは下がる、下がったものは上がるのは、経済の常識である。

 なぜか? 人間は儲けたい儲けたいとする一方で、損したくない意識を片時も手離さないからだ。 それが、行き過ぎにブレーキをかけて、逆方向へ振れさせるエネルギーとなる。

 だから、たとえば好景気が過熱してくると、「大丈夫かな、調子よく行き過ぎているんじゃないかな」といった警戒心が高まってきて、みな財布のヒモを締め始める。

 それが景気に冷や水をかけ、経済活動を一気に縮小させることで、さしもの景気上昇も失速していく。 大自然の摂理と同じで、誰も止められない。

 さて、ここからが本論である。 日本は、1993年9月に公定歩合を1.75%へ下げて超低金利政策に舵を切った。

 それ以来ずっと政府日銀は、デフレ脱却や景気浮揚のためには、なにがなんでも金利を下げなければでやってきた。 しかし、さっぱり効果は上がっていない。

 どうしてか? 24年間もゼロ金利そしてマイナス金利の状態にあると、企業や国民の間でバランス感覚すなわち経済合理性が働く水準が、ゼロ近辺にまで下がってしまう。 

 その結果、0.1%とか0.3%儲かれば良しとするような低水準のバランス感覚が、国全体で定着していく。 これでは、経済が動くわけがない。

 もともと金利は3%~4%ぐらいが通常であって、それを目処にし緊張感をもって、企業も個人も経済活動や生活を営んでいる。

 ところが、0%に金利を抑え込んでしまうと、儲けの目標もゼロ同然にまで下がり、緊張感どころか弛緩が定着してしまう。

 その結果、日本経済の潜在成長力がどんどん下がってしまったのだ。 そして、いつまでたってもデフレ状況が続くことになる。

 この辺り、経済では当たり前の感覚なんだが、政策当局も学者もどうして一顧だにしようとしないのだろう? 

 ともあれ、そのうち嫌というほど判らさせられる時がくる。 米国はもちろんのこと、EUも金利正常化へ舵を切ろうとしている。

 ゼロとかマイナスといって異常な金利水準を、普通の経済活動が営まれる3%~4%の水準に戻していこうという方向だ。

 その波は必ず日本にも押し寄せてくる。 市場金利は放っておいても上昇に転じ、日本全体に大混乱は避けようがない。

 大混乱の中から、日本経済の自立的な再生の芽が育っていくのだろう。

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