米国の出口戦略、こちらの方がまともな政策

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 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備理事会)が、金利の引き上げを模索している。 回復基調にある米国の景気に水を差さないように慎重ながらも、金利正常化の道を歩もうとする政策姿勢は、きわめて健全である。

 それに対し、マーケットでは目先の反応を示すプレーヤーが多く、先週金曜日は株価が大きく売られた。 今週に入って、昨日の月曜日は大きく戻した。

 われわれ長期投資家は、どちらに重きを置くかといえば、紛うことなく米国の出口戦略である。 マーケットなど、その時々の状況でどちらにも振れるだけだから、放っておけばいい。

 一方、金融当局の政策に関しては、その方向が経済合理性を踏まえたものであるならば、大いに尊重すべしである。

 米国の場合は、金融バブルの後始末に早々と目処をつけ、景気も戻り歩調を強めている。 そこで次なるは、ばら撒きすぎた資金を吸収すべく金利を正常化させようと、手を打ち始めたのだ。

 大量の資金を経済の現場に投入したまま放っておけば、次のバブルを引き起こすのは目に見えている。 一歩間違えると、とんでもないインフレにもつながりかねない。

 その混乱を防ぐためにも、出口戦略に入って行こうというわけだ。 また、現在の金利水準は異常なまでに低く、正常な経済活動を営むのに妨げとなっているから是正しようとする。 健全な方向だと思わないか。

 ひるがえって日本は、まだまだ金融緩和を続けるという。 デフレ解消や景気浮上の目処が立っていないからというが、どこまでやれば気が済むのか?

 いくら大量の資金を用意して企業に借りてくれといっても、企業の方は新規の投資対象がそれほどない。 下手にお金を借りて、バブル投機に踊り狂った80年代後半のような愚は避けたい。

 そこのところが、どうしてわからないのだろう? マネタリストとか米国の経済理論を持ち込んでも、そうそう日本では通用しない。 人口が増え続けている米国ならともかく、国内需要が買い替え中心になってきている日本では、やみくもな設備増強投資など自殺行為となりかねない。

 検討すべきは、個人や家計の消費需要を高めて、その先で企業の投資が活発化していく図式だろう。 そのためには、先ず金利を通常の3%~4%に戻し、個人や家計の利子所得を復活させることだ。

 金利が3%とか4%に戻れば、家計は833兆円の預貯金残高から税引き後で、20兆円とか27兆円の利子を得る。 その半分を消費に回すだけでも、日本経済は2%とか2.7%の成長を遂げるのだ。 それをみて、企業活動は放っておいても活発化する。

 やみくもに資金を供給して企業の設備投資を煽るよりも、個人消費が先導する形で企業の設備増強意欲を高めさせる方が、はるかに自然体のはずだが。

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