金融正常化への長い道のり

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 明日は出張で書けないので、2日分まとめて長めの長期投資家日記となります。 ガマンして読んでください、すごく大事なこと書くので。

 米国でジャンク債への投資を主体としてきたファンドが清算を迫られた。 それを嫌気して、株式市場はストーンストーンと下げている。

 2007年8月にフランスの大手銀行パリバが突如として、新規の金融取引の受け入れ中止を発表した。 それが引き金となって、膨れ上がるままに任せていた世界の金融バブルが変調をきたし、翌年9月のリーマンショックにつながっていった。

 その連想が世界の金融マンの間を走り回り、知りたがり屋のくせして不安症の機関投資家や市場関係者が多い日本株市場で、一番の下げ反応を示しているわけだ。

 われわれ長期投資家は何も恐れることはない。 むしろ、ここから10年ほどの間は本格的な長期投資の存在感を高めるチャンス到来と、積極かつ果断に攻めていこう。

 ゆっくりと整理してみようか。 1990年に入っての日本のバブル崩壊でも、2008年の世界の金融バブルの崩壊でも、金融不安や信用収縮を恐れて低金利政策と大量の資金供給に走った。

 銀行の連鎖倒産を防ぐ一方で、企業などへの貸し出しを増加させれば、信用不安をきたすことなく経済活動は活発化するという考え方だ。 そうしないと、ひとつ間違えれば金融恐慌から経済恐慌に発展してしまうというエコノミストや専門家も多かった。

 さて、その成果は? 日本は相変わらず経済低迷とデフレ現象に悩んだまま。 EU でも銀行の倒産は防いでいるものの、経済活動の回復は遅々としている。 その一方で、大量の資金供給とゼロ金利政策に頼る度合いがどんどん高まっている。

 さっぱり効果が上がらず、その横で大量の資金供給(国債発行)がもたらす弊害への懸念が、暗黙知のように市場の水面下で広がっている。 「次なる、ひとつ間違えれば」は、大量に発行してきた国債の暴落と市場金利の急上昇である。

 それを未然に防ごうとしているのが、米国の出口戦略である。 米国では国債や住宅債権の無制限買い取りが功を奏して、株価や住宅価格の上昇が資産効果を生み、それが経済活動を底上げする状況にまで回復してきた。

 一時は10%に達した失業率が5%にまで下がってきたし、消費も堅調になっている。 であるならば、一刻も早く金利正常化に歩を進めるに越したことはない。

 そういった米国の出口戦略に、世界の金融マーケットが戦々恐々としているわけだ。 われわれ長期投資家は、現状がどうのとか政策がこうのとかは横へ置いて、本来あるべき姿から物事を判断し、しかるべき行動をしよう。

 第1に、いつのバブル崩壊もバブルの当事者に責任を全うさすべきである。 いかに銀行だろうと救済はモラルハザードを招き、救済コストは社会や経済全体が負うことになる。 現に、銀行は潰れず経営者は安泰の一方で、国の借金や国債発行額は著増しているではないか。 これは米国でも例外でない。

 第2に、古今東西いつの時代でも、金利が経済を動かすインセンティブ(刺激剤)と調整弁の役を果たしている。 イスラム金融においても、金利はつかないがモノや役務が金利の代用をする。

 金利が上昇しそうだから、早めに資金を調達して投資を急ごうとする。 すなわち経済活動の前倒し効果だ。 金利が高すぎるから事業を縮小しようといった、ブレーキ効果も働くわけだ。

 そう、金融が経済の潤滑油とすると、金利はその温度である。 潤滑油の温度が低すぎると固まってしまい、高すぎると沸騰して潤滑油の役目を果たさなくなる。 金利はある程度の水準にあってはじめて、健全なる経済活動を促進させることになる。

 したがって、超低金利やゼロ金利政策で経済活動を活性化させることはできない。 ただ金融マーケットの住人達を活気づけるだけだある。

 第3に、経済はすべて需要と供給である。 いくら資金をばら撒いたところで(供給増加)、それが投下資金以上の需要を生み出さなかったら、お金の無駄遣いとなるだけのこと。 

 日本は1992年9月からずっと年平均にして26兆円の景気対策や経済活性化予算を計上してきたが、まったく効果は上がっていない。 本来なら、5%ぐらいの成長効果をもたらしても良かったほどの巨額予算であるというのに。

 恐ろしいほどの政策ミスマッチが続いたわけだ。 その横で、国の借金は1058兆円に達した。 国に頼っていても、景気は良くならないどころか将来のツケばかりが著増していっているのだ。

 このままいくと、スタグフレーションの恐れが高まるばかり。 景気はさっぱりよくならないのに、物価や金利だけは上昇していく図式で、人々の生活水準は一気に下がる。

 第4に、供給過剰は必ず値崩れを招く。 これだけ国債を増発してきたのだから、国債価格が今の天井圏にあり続ける保証はどこにもない。 国債は満期時に国が償還してくれるから大丈夫というなかれ。 償還分の国債をまた発行する悪循環となるだけのこと。

 一方、国債が値崩れに転じたら、そのまま暴落まで行ってしまう可能性が高い。 これだけ大量に発行しあらゆる金融機関が保有しているから、どこかで売りが始まったら皆が売りに走るのは目に見えている。

 それは市場金利の急上昇を招き、超低金利に安穏としてきたところは大混乱に陥る。

 もう少し書きたいのがが、そろそろ出なければならないので、結論にはいります。 これから10年ほどは、いろいろ大荒れとなるのでしょう。 いってみれば、日本のバブルも世界の金融バブルも、強制的な後始末を迫られることになる。

 しかし、皆さんも世界中の人々の生活も決してなくならない。 それを支える企業活動も途切れることはない。 その部分だけに焦点を当てている、われわれの長期投資は何があっても、平然として生き残っていきます。

 ともかく、さわかみファンドと一緒に荒波を乗り切っていきましょう。