選択の政治を

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 年金や医療の保険積立て制度が、ずっと前から行き詰っている。 その証拠に、毎年の予算から不足分を補う、いわば税による補てんがずっと続いており、その額は増える一途ではないか。 毎年1兆円ちょっとずつ増えているのだ。

 今年度は32兆円が社会保障関連費として予算計上された。 予算総額の3分の1にあたる巨額の補てんである。 高齢化の進展で、補てん額はますます膨らんでいくのは避けられない。

 同様に、国債費が23兆円も計上されている。 今年も37兆円の国債発行で税収不足分を補うことになっている。 予算の40%前後を国債発行で賄うという、恐ろしく不健全な国家財政が、もう17年も続いているのだ。

 新規国債の発行費用や、900兆円に届こうとしている既発国債の利払い費を合わすと、今年度は23兆円ちょっと必要となる。 超低金利政策で利払い費が抑えられているからまだしも、景気回復で金利水準が上がってきたら、23兆円がすぐ30兆円40兆円へと跳ね上がっていく。

 両者を合わせると55兆円を超え、予算の57強を占める。 そして、両者とも今後ますます膨れ上がっていくのだ。 つまり、日本の財政はどんどん悪化していく。

 いくら景気回復で税収額を高めるといっても、そう簡単には追いつかない。 このままズルズル行くと、そう遠くない将来に財政はバンクする。

 そこでだ、国あるいは政府はこの危険な財政綱渡り状況を正直に訴えて、国民にどちらを選ぶか選択してもらう政策を打ち出してはどうか。 それも、早急にだ。

 先ず、高齢化の進展で増え続ける社会保障費に関しては、年金給付額や医療費を大幅に削減するかの。 それとも、消費税あらためた社会保障税の税額を15%水準にまで引き上げるのを受け入れるかだ。

 どちらを選ぶかは、高齢者はもちろん国民全体が判断すればいい。 現役層が減っていく中、年金や社会保障費の積立て額を大きく伸ばす選択はない。

 となれば、年金額の大幅減額と医療費の個人負担増加を認めるか、社会保障税を国民全体で広く薄く負担していくかしかない。 どちらかを選んでもらう、それが民主主義であろう。

 次に国債費だが、社会保障関連費の予算負担分が減れば、状況は違ってくる。 年金や医療費を大幅削減するか、社会保障税を15%にまで引き上げることで、毎年の予算計上は不要となる。

 それどころか、年金や医療費の社会保険の積立て制度そのものを縮小していける。 つまり、公的年金などで運用にまわしている巨額資産を国庫に繰り入れることで、国債発行額を大幅に減らせるわけだ。

 ここまで一気にやってしまえば、日本の財政はみるみる健全化していくだろうし、国の借金も減り始める。 もたもたしていると、国債の暴落と長期金利の急上昇、それと酷いインフレの大津波に襲われる。

 国の目指すべき方向として、国民にどちらを選んでもらうか、それこそが政治であろう。