高齢者層 = 預貯金+分配型投信?

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 日本の個人金融資産1600兆円のうち、60%強が65歳以上の高齢者に保有されているといわれる。 そして、その資産運用ともなると預貯金が大半で、一部に分配型投信の購入といったところ。 さて、この図式いつまで続くものだろうか?

 先ず預貯金だが、高齢者に限らず日本人の貯蓄信仰は根強いから、そう大きな変化はないと一般的にはみられている。 本当に、高齢者層の預貯金残高はこのまま高水準で推移するだろうか?

 2週間前に書いたように、家計の貯蓄率がマイナス圏に入ってきて、いよいよ貯蓄の食い潰しが本格化する。 高齢者は年金以外に大きな収入はないから、貯蓄はこれから目に見えて減っていくことになる。

 年金財政の悪化状況は誰もが認めるところ。 そこへ、黒田日銀総裁の2%インフレ目標が現実になってくると、長期金利の急騰で国債等の比率が高い年金運用は大きな評価損を抱え込むことになる。 本物のインフレが到来したら、年金生活者はもう目も当てられないことになる。

 それが嫌なら、しっかりと長期投資しておくしかないが、さてどうなることか。 投資なんて御免という高齢者は多いし、もう長期投資している時間もないという人がほとんどだろう。

 そう考えるに、スピードの差こそあれ、日本の高齢者層の預貯金残高は減っていく方向に入ったとみていいだろう。 10年もしたら、結構大きく減っていよう。

 次に、高齢者層が好むとされる毎月分配型投信の販売だが、現在の人気はそういつまでも続かないのではなかろうか。 簡単な話、いまの高齢者層は順に人生を終えていく。 それに続く次の高齢者層が、果たしてどこまで分配型投信で小遣いを欲しがるだろうか?

 逃げ切り世代といわれている現在の高齢者層ほどの余裕は、将来の高齢者層に望むべくもない。 それどころか、年金の給付開始年齢が繰り上げられたりで、年金財政への不安と不透明感は高まる一途である。 いつまで、分配型投信で小遣い代わりにしましょうなんて言っておれるだろうか。

 一方、現役層の間でじわりじわりと増えている長期保有型投信の保有者は、次の10年で相当に財産づくりが進む。 その人達が先行モデルとなって、個人マネーの預貯金から投資へのシフトは劇的に高まろう。

 果たして、10年後に預貯金と分配型投信偏重の高齢者マネーがどこまで変わっていようか? 案外、驚くほどの変化となっているのでは。 われわれ長期投資家にとっては、ようやくまともな動きが高まってきたなと歓迎するだけのことだが。