ミスター・マーケット

Browse By

 長期投資のお手本ともなっていて、米国最高の投資家といわれているウオーレン・バフェット氏は、よく ”ミスター・マーケットとは仲良くしない方がいいよ” といっている。

 彼のいうミスター・マーケットとは単なる相場を越えて、相場の魔力に近い意味合いがある。 市場では買い人気が高まってくるにつれ、たとえば株式市場なら株価上昇が人々の儲け心をどんどん煽り立てる。

 株価が上昇している背景には、それなりの買い材料がある。 ところが、市場では株価の上昇そのものが、次から次へと買い材料を創出していってくれる。 人々の儲け心が更なる株価上昇への期待感を高め、その期待感がありとあらゆるものを好材料視するようになるわけだ。

 好材料がどんどん登場してくるにつれ、株価は否応なしに上昇ピッチを上げていく。 もうそうなると、買わなくては損、一刻も早く相場に乗らなければの投資家心理が沸騰して、投資価値に対する冷静な判断などそっちのけで買い急ぐ。 

 これが、ミスター・マーケットである。 買い材料の云々や投資価値の判断を差し置いてでも、ここは買っておかなくてはの熱気が株価をどんどん押し上げていく。 その熱気に巻き込まれてしまうと、そこから抜け出すのは至難の業となる。 

 そのまま株価の天井まで行ってしまって、暴落相場に遭遇する。 そこからは、我を忘れての売り急ぎに一転する。 とにかく売っておこう、売って損失を最小限に抑えなくてはで、もう投資価値も何もない。 あるいは、株価の暴落になす術もなく、茫然自失となる投資家が続出する。

 暴落相場の後、株価全般が長期低迷に陥るや今度は買えない理由探しに躍起となる。 市場も投資家もリスク回避を優先するあまり、投資価値などには見向きもしなくなる。

 われわれ長期投資家には絶好の買い場となるが、ミスター・マーケットは ”こんなところで買っても、大損するだけだよ” と、悪魔のようにささやく。 かくして、多くの投資家は売り優先の買い見送りを決め込むから、市場は長期にわたって低迷する。

 そういったミスター・マーケットに付き合っていたら、まともな投資などできやしない。 バフェット氏はそういうが、多くの投資家はどうしても相場動向が気になって仕方がない。 もうそれが、ミスター・マーケットの魔の手に誘われていることになってしまうのだ。

 いつもいう長期投資家の企業応援投資は、相場動向とはつかず離れずで、安ければ買い高くなったら売るを繰り返すのみ。 真っ正面から取り組むべきは、どの企業をどこまで応援できるかを、ていねいに観察ししっかり考え続けることだ。