総選挙の投票を前にして

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 週末に迫った総選挙だが、投票率は過去最低水準らしい。 国民の関心がそれだけ薄いわけだ。 そもそも、今回の選挙の争点がいまいちはっきりしない。

 それどころか、どの政党も票を稼ぐことばかりに焦点を当て、きれいごとを並べた政策のオンパレードとなっている。 政策というよりも、票稼ぎのスローガンばかり。

 これとこれで国民の信を問うといった明確な政策提示がないから、投票する側も判断に苦しむ。 唯一あるのは、この2年間のアベノミクスを評価しますか、どうですかの信を問うことぐらい。 そんな程度で総選挙に踏み切ったのでは、とうてい投票所へ足を運ぼうという気運は高まってこない。

 ここまでのアベノミクスは、日本のどうにもならなさに一条の光が差し込んできたぐらいの成果しか上がっていない。 それでも、その前の民主党政治が酷すぎたこともあって、敵失で稼いだ及第点をもらえている。 その程度で国民の信を問うというのであれば、表現は悪いがしょせん政治ごっこである。

 政治ごっこで狙うは、巷でいわれている自民党の300議席以上の確保なんだろう。 圧倒的な多数議席を確保して、いよいよ本格的に安倍政治を展開するというのであれば、やはりどんな政策を打ち出していくかを選挙の公約で明確に打ち出すべきである。

 アベノミクスの成長戦略に官僚の抵抗が強すぎるというなら、官僚支配を打破するとはっきり言えばいい。 農業関連や医療で抵抗勢力がネックとなっているのなら、どう抑え込んでいくかの政策方向を提示してくれれば、国民も判断しやすい。 残念ながら、具体策は見えてこない。 野党も似たり寄ったりである。

 いまほど、骨のある政策で堂々と論陣を張れる政治家の出番はない。 きれいごとを並べては諸問題を先送りし続けてきたのが、日本の政治である。 だが、もう限界に近い。

 このままでは危ないと、国民の多くは薄々わかっている。 やるべきことも語りつくされている。 残るは、骨太の政治家の出現だけだ。

 すなわち、ここから3年の間、苦い薬を国民全体で飲みことになるが、日本経済と社会の抜本的改革に突き進もうではないかと訴えるべきである。

 骨のある政策課題? こうすれば日本経済や社会を活性化できるという政策案は次の通り。

1.年金は先進国どこでも苦しんでいる保険積立て制度を廃止して、消費税を改めた社会保障税で基礎年金の全額を賄う。 いま年金を受給されている高齢層や、ずっと積立ててきた現役層は、現時点での権利分を上乗せした額を生涯受け取れるようにする。 それによって、一切の不公平は発生させない。

2.年金の社会保険積立て制度を廃止することで、厚労省中心に年金がらみ組織を大幅縮小して諸コストを削減する。 現有の公的年金資産は国庫へ繰り入れて、国の借金を相殺させる。 いつも運用成績に追われる、公的年金の運用も不要になる。

3.基礎年金で不足分は、国民それぞれの判断としながらも、自分年金づくりを奨励すべく税控除を手厚くする。 長期保有型投信を中心とした、本格的な運用文化を醸成する。

4.これらの全部でもって年金不安は一掃できる。 税負担は増加するが、2016年から始まるマイナンバー制度ですべての所得がコンピュータ把握されるから、公平公正に徴税して賄える。

5.諸規制や利権の巣窟となっている補助金や助成金は、すべて原則として5年で廃止する。 毎年5分の1ずつ削っていって、官の関与と税で食うだけの組織を自動的に減らしていく。

6.古い企業中心に既得権益化している感のある租税特別措置法は全廃し、浮いた分は法人税の軽減にまわす。 それでもって、新規の企業進出や起業を促進する。

7.ドイツ企業の国際競争力強化と失業率低下の両方を成し遂げた、シュレーダー社民党政権が断行した労働改革を参考に、硬直化している日本の労働行政にメスを入れる。

8.農業基本法を抜本的に見直して、専業農家育成など日本の農業の自立と経営力強化を促進する。 農家の高齢化が進んでおり農業改革は急務であるが、一方で若い人たちの間で農業への関心が高まっているから、手を打つなら早い方がいい。

このぐらいを一気にやってしまえば、日本が抱えている停滞感やもやもやはほとんど一掃できる。 その間にも、新しい富の創造主たちが続々と立ち上がってくるはず。