自然エネルギーの開発と普及は国家的急務である

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 よく日本の食料自給率は40%を下回るほどに低いと問題視されるが、エネルギーの自給率ともなると数%あるかないかの惨憺たる有様である。

 食料の場合はカロリーベースの数字であって、野菜などカロリーの低いものは統計に含まれない。 ということは、野菜や漬物を食する割合の多い日本人の食生活における本当の自給率はずっと高くなる。

 一方、エネルギーの場合は原油・石炭・LNG などのほとんどを輸入に頼っている。 かろうじて水力発電が純国産だが、その割合は数%にも満たない。

 日本は戦後復興からずっと輸入エネルギーを頼りに経済発展を遂げてきたが、それもこれも自由貿易体制のおかげである。 お金さえ出せば、いくらでも海外のエネルギー資源を購入できたのだから。

 しかし、第一次石油ショックの時に油断ともいわれたように、エネルギー小国の脆弱性を露呈した。 産油国の輸出制限で、日本はてんてこ舞いとなった。

 いま原発問題を騒いでいるが、その再稼働あるなしにかかわらず、エネルギー小国の現実はそのまま残っている。 なにしろ、稼働を停止している原発すべてを復旧させたところで、電力供給の30%にも満たないのだ。 残りの70%前後は相変わらず原油や LNG の輸入に頼るのが、日本のエネルギー事情である。

 幸い、米国からのシェールオイルやオーストラリアからの LNG 輸入の増加などで、中東への依存度が少しずつ下がってはいる。 油断といった国家危機の襲来は、それほど現実的ではない。

 それでも、国家利益や国家防衛上の観点からいっても、エネルギー自給率の大幅な引き上げは最優先の国家課題である。 一朝ことあらば、日本経済も国民生活も大混乱に叩き落されてしまうのだから。

 ここは覚悟をもって国産エネルギーの開発普及を急ぐと決めさえすれば、日本はいくつか絶対的に有利な条件に恵まれていることに気付くはず。

 先ずは、四方が海に囲まれた地理的条件。 日本近海に眠るメタンハイドレードは天然ガス換算にして100年分の需要を満たすとのこと。 採掘コストがかかるとか技術的な問題が残るとかいわれているが、米国のシェールガスの開発も長いこと不可能とされていたのを、民間事業家の情熱と努力によって打破した結果である。

 日本列島の南側には世界最強の潮流である黒潮が東へ向かって流れている。 その流れを利用して水力発電すれば、どれだけ強大なエネルギーを産出できることか。

 他にも、地熱発電や洋上風力も未開発の大エネルギー源である。 また、国土の70%強が山林の日本ではバイオマス発電によって、熱および電力エネルギーの地産地消と地域経済活性化が実現できる。

 最近あちこちで話題となっている藻の油分を取り出したバイオディーゼル燃料も有望である。 農業で使う耕耘機やトラクターの燃料を、地元の池でもって培養するなんて実に楽しい話ではないか。

 正直言って、原発がすべてではない。 原発問題をどうのこうの言っている暇があったら、そこで費やされる意識や労力の半分でも自然エネルギーの開発普及に向けるべきであろう。