年金制度は限界、そして新しい方向が

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 プロシアの宰相ビスマルクが始めたとされる年金制度だが、長年月の間にいろいろな工夫や改善が施されて今日に至っている。 当初は、土地を強制収容された地主に対する補償として年金制度が提案されるなど、一部の人々に対する特権的な処遇だった。

 それが徐々に国民の全員、もしくは多くを対象とした老後の保障をする制度に整備されていったわけだ。 制度といっても保険積立て方式をとっていて、できるだけ広範囲の加入者が薄く負担していくことで、年金受給者への支払いをカバーしようとするもの。

 現役層が年金の積み立てをし、高齢層が年金を受給するという、世代間扶養のスタイルでずっとやってきた。 それを確定給付型の年金制度というが、高齢者層への給付が増えるにつれ、現役層の積立て負担が重くなっていった。

 高齢者層への給付増加は、年金制度を始めた当初はともかくとして、確定給付型の年金制度を長く続けていれば必然的に起こる現象である。 そこへ、年金制度が整備されている先進国はどこでも長寿化が進んだのが、年金財政悪化に輪をかけた。

 年金財政の急悪化と現役層の積立て負担増加で、世代間扶養の限界が見えてきた。 そこで、確定拠出型の年金制度というのが導入された。

 確定拠出型の年金制度では世代間扶養という考え方を廃し、はじめから年金積立は自分の年金のためというものに特定してしまう。 それでもって、世代間の不公平感を一掃しようということだ。

 自分の年金は自分で責任を持つという確定拠出型の考え方は、新設の年金などでは急速に定着していっている。 しかし、国の年金や大企業など歴史のある企業年金では、すでに年金を受給している高齢層が多くそう簡単には舵を切れない。

 とりわけ日本は、高度成長期に国の年金制度を先進国でも最高度に充実させたものの、今は世界最速の高齢化で年金財政の急悪化に直面している。 そう遠くない将来には、一人の高齢者を一人ちょっとの人数で支えることになる。 どうみても、年金財政の破たんは時間の問題である。

 日本ほどひどくはなくても、国の年金制度が限界にきているのは、先進国どこでも共通の悩みとなっている。 だから、数年ごとに年金制度の抜本的改革とやらを繰り返しているわけだ。 かといって、確定拠出型の年金制度への切り換えは簡単にできない。

 ひとつ、方向が見えてきている。 それは、国が年金という大きくて重い制度を抱え続けるのは無理、個人年金という方向へ移行させようというものだ。

 国は本当に最低限の老後保障をするにとどめ、そこから先は個人個人に自分年金づくりを進めてもらう。 自分年金づくりに対しては、相当に広範囲に税優遇を与えるという方向だ。

 この方向ならば、国としても年金制度維持の重荷から解放されるから、税優遇したところで安いものである。 しかも、国民に対して確定拠出型の年金と同じように、自分の将来は自分で責任を持ちなさいという考え方を徹底できる。

 年金というのは大事な制度である。 しかし、永続性があって国民の誰もが安心できるものにしていかなければならない。 その意味では、個人個人が自分年金づくりを進め、国は税で最大限の優遇を与えるという方向は、いずれ世界の潮流となっていこう。

 こういった歴史の読みを先取りして既に15年の実績を積んできたのが、さわかみファンドである。 そのうち、さわかみファンドの提唱する長期投資で自分年金づくりをしようという考え方が、日本はおろか世界のスタンダードとなっていこう。

 そこへ、税の優遇が追い付いてきたら鬼に金棒となる。 誰のため?  国民一人ひとり、そして社会の安心と安定のためだ。