個人金融資産の内容が変わっていく

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 もう間もなく、6月末時点の家計金融資産状況が日銀から発表される。 おそらく、3月末のものからそれほどの変化はないだろう。 預貯金が全体の51%前後で、株式・債券・投信の証券投資が10%前後といったところに収まる。

 実は、個人金融資産における預貯金保有の比率は50%~54%の間で、もう数10年にわたってずっと変わっていない。 証券投資は8%~13%で、バブル時に時価評価が高まって16%をつけたぐらい。

 これが米国ではちょうど逆になっている。 すなわち、預金が8%~10数%で、株式はじめ証券投資が30数%~50数%となっている。

 日本は貯蓄信仰が人々の意識を岩盤のようにしているが、米国ではリスクを取ってでも財産を殖やそうという意識が高い。 そのような認識が定番のようになっている。

 しかし、これから10年もすれば、日本の岩盤のような預貯金に劇的な変化がみられよう。 長いこと50%台にあった預貯金比率が、30%台それも下の方まで落ちていると思われる。

 二つの要因がある。 ひとつは高齢化の進展である。 個人金融資産の60%ちょっとを保有している高齢者層だが、いよいよ貯蓄の本格的な取り崩しに入っていく。

 高齢者層は年金をたっぷりもらえる逃げ切り世代ともいわれているが、それでも年金だけでは足らず貯蓄を充てている。 そういった人たちがこれから一気に増えていくのだ。

 もうひとつは、いくら預貯金で安全確実にといったところで、年0.02%の利子では全く殖えない。 黒田日銀総裁の2%インフレ目標が現実になっていくにつれ、預貯金の目減りは加速的に進む。 

 おそらく、2%のインフレでは収まらないだろう。 日銀が100兆円を超す国債の買い増しをしているが、それだけ紙幣を刷っているわけである。 それでなくてもジャブジャブの金融緩和をしており、いつお金の価値の下落つまりマネタリーインフレの火がついてもおかしくない。

 その横で、われわれ長期投資家はインフレに乗って資産をどんどん殖やしていく。 それを間近に見て、預貯金者の間で株式投資や投信購入の雪崩現象を起こすことになろう。

 気がついたら、日本の個人金融資産における証券投資比率が30%前後にまで上昇していたということになるのだろう。