生活者投資家と企業

Browse By

 この4月から、ある大企業と一緒に生活者投資家の考え方を広める活動を開始した。 数年前から折にふれて、その企業の幹部や従業員向けのセミナーをやってきたものを、一段と高めた本格的な活動にしていこうということになってのこと。

 全国各地に展開されている主力工場の従業員向けのものと、彼らの奥さん向けのものとの2本立てで、ほぼ一日びっしりの勉強会となる。

 主旨は、一般生活者が自分たちにとってなくてはならない企業を、毎日の生活消費で売り上げに貢献するのと同じ感覚で応援株主になろうということ。

 企業は消費者があってこそ、事業の発展と利益を追求できる。 生活者にとっても企業の生産と供給活動があるからこそ、毎日の生活を営むことができる。 いってみれば、生活者と企業とは紙の表裏みたいなもので、切っても切れない関係にある。

 であるならば、その関係をもっともっと意識的に深くしていけるはず。 意識的にとは、企業と生活者とはお互いさまの関係にあるという考え方を、感謝あるいは運命共同体のレベルにまで高めてしまうのだ。

 そこまでいくと、企業も生活者も心底から、お互いの立場を尊重しつつ一緒に頑張っていこうとなる。 よくある、おざなりの企業の社会責任とか環境意識の高さとかを越えて、本気で ”生活者あってこそ” を経営のあらゆるレベルで追及するのだ。

 その中には、できるだけ多く雇用を創出し将来に向けての投資も積極的に推進するなど、企業の利益を圧迫しかねない経営拡大戦略も入ってくる。 税金もしっかり払おうとなる。

 これは既存の株主からすると、企業の利益最大化努力をないがしろにする経営姿勢となり、とんでもない暴挙と映る。 当然のことながら、株価は売られて安くなる。

 そこで登場するのが、生活者株主である。 生活者としては、たとえその企業の利益が圧縮されても、雇用を増やし将来に発展拡大のための投資を怠らないことの方がありがたい。 その方が、その企業の永続的な発展にもプラスになると考えられる。

 であるならば、生活者にとってなくてはならない企業を応援すべく、既存の株主が大きく売ってくるところは、生活者株主がどんどん買ってやればいい。 それでもって生活防衛とするのだ。

 投資なんて安く買っておいて、高くなるのを待つだけのこと。 既存株主が売り逃げに走るところを片っ端から拾っておいて、先ずはその企業を応援しようとする生活者株主としての存在感を示す。 同時に、その企業と運命共同体意識をもって、ゆっくりじっくりの経営拡大を見守っていく。

 ある程度の時間はかかっても、企業が社会からの支持を受けて事業を拡大していくにつれ、その企業の投資価値も高まり株価も上昇する。 そういった株価上昇を享受することで、もう十分に自分年金づくりとなっていく。

 こういった一連の考え方を説明し、たとえのんびりでも長期投資の複利効果がどれほどすごいことになるかを電卓で計算してもらうのだ。 すると、社員以上にどよめくのは主婦の方々である。 長期投資って、そんな簡単でいいの、それで長い間にはすごい財産づくりになってしまうんだねと、こちらが驚くほど盛り上がる。

 まだ始まったばかりだが、感触は想像以上である。 この地道な勉強会をどんどん広めていってやろうと思う。