輸出が低調なのは

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 日本経済の失われた20年といわれてきた長期低迷だが、アベノミクスと黒田異次元緩和でデフレ脱却の方向へ舵が切られつつある。

 ちょうどピッタリのタイミングで、為替も円安基調へと転換した。 これは、日本の円安政策が功を奏したというよりも、為替相場特有のゼロサムゲームがもたらす反転スイングの結果である。

 2007年に発生した金融バブル崩壊前までの緩やかな円高基調は、たしかに識者の指摘するように各国の通貨安政策のとばっちりが円に集中した面が強い。

 しかし、リーマンショックやユーロ危機でドルやユーロが大幅に売られ、その相方として異常なまでに円高が進んだのは、為替相場のゼロサムゲームそのものである。 それが、米国経済の回復やユーロ危機の鎮静化で、売られ過ぎたドルやユーロの買い戻しが入った結果として円安が進んのだ。

 ところで失われた20年は、超円高によるデフレ現象が賃金上昇を阻み、消費の低迷などから日本経済を真綿で首を絞めるように痛めつけていったから、そういった専門家の分析もある。

 たしかに、すごい円高だった。 バブル崩壊後もまだ日本経済の勢いが続いていた1996年当時、1ドルが140円台後半だった。 そこから趨勢的な円高で、1ドルが70円台まで進んだ。 それとともに日本経済のデフレ現象が深刻化していったというわけだ。

 ともあれ、多くの専門家が日本経済浮揚の絶対必要条件として指摘してきた円安は実現した。 それなのに期待した輸出の大幅な伸びは一向に見られない。

 どうしてなんだろう? それが今日の主題である。 ひと言でいえば、日本経済の成熟化が進んだ結果として、産業構造の一大変化が現在進行中だからだ。

 家電や自動車など耐久消費財は国民に広く行き渡った。 国内にはもう買い替え需要しかない。 一方、世界中では新規需要が爆発的に拡大している。 メーカーとしてはコスト高になりやすい日本からの輸出で苦労するよりも、膨大な新規需要が見込まれる海外へ生産体系をシフトした方が、よほど商売がやりやすい。

 ありがたいことに、超円高という援軍があったから、海外への生産体系シフトは驚くほど急ピッチで進められた。 日本企業の海外生産拠点が軌道に乗ってくるにつれ、国内からの輸出は減っていくのは当然である。

 国内からの耐久消費財輸出はよほど国際競争力が強いものに絞られていく。 それ以外は、現地生産と現地販売が主体となっていく。 その結果、日本の輸出は大幅減少となるわけだ。 これは日本経済の成熟化がもたらす避けようがない流れである。

 ただし、日本の産業界はそこでクシュンとなるほど柔ではない。 ここから先、新しい輸出品目が次々と台頭してきて外貨を稼ぐことになる。 たとえばロボットとか炭素繊維などハイテク素材だとか、日本の高度技術を持ってしかできない工業製品は山ほどある。 そういった日本ならではの輸出品目が世界を席捲していくことになる。

 ドイツが好例である。 ドイツならではの高級品が世界にどんどん輸出されている。 自動車など世界に羽ばたいている耐久消費財はほんの一部で、多くは利益率の高い生産財の輸出である。

 今日はインベスターズTV の生放送だ。 少し違う視点で話してみたい。