財産づくりで大事なこと

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 プライベートバンキングという言葉が、最近はいろいろな意味で使われている。 日本で最初にプライベートバンキングを導入した1979年当時、この概念をどう日本語に訳したら良いのかずいぶん悩んだものである。

 富裕層に対する特別サービスと訳しても、なんのことかはっきりしない。 もちろん、よくいわれる子弟の留学支援だとか、プレミアムのつくような人気チケットの取得などのお手伝いも入ってくる。 しかし、そんなものはプライベートバンキングのマイナーな部分でしかない。

 実をいうと、それから35年ほど経った現在も適切な訳語を見つけ出していない。 そもそも、プライベートバンキングという英語やバンキエプリヴェというフランス語だって、相当に幅広い解釈ができる。

 長いことプライベートバンキングの仕事をやっていて、”こういうことなんだろな” とはっきりしてきた。 それは、”お金を持つに相応しい個人やファミリーになっていってもらう” お手伝いということだ。

 ただ単にお金を殖やせばよいのではない。 お金をどう殖やしていくかの過程から、殖やしたお金をどう世の中へまわしていくかまで、常に社会のためという意識を片時も離さない。 それが故に、社会正義や道徳感そして品格あるいは美意識といったものが備わったお金持ちになっていくわけだ。

 そんな青臭いことは、どうでもいいといわれるかもしれない。 しかし、お金を持つに相応しくあろうと意識し続けてきたファミリーが、10代15代と世代を重ねて1000億円を上回る資産を築いてしまっている事実に山ほど接すると、青臭さの中に真理みたいなものを実感させられる。

 逆の例は一杯あるではないか。 あぶく銭身につかずとか、浮利を追って得た金は軽いからすぐ消えていくとか、昔からいわれるように資産を持ち続けることは難しい。

 われわれが追及してやまない本物の長期投資には、お金を持つに相応しい個人やファミリーになっていこうよという考えが大前提にある。 より良い世の中をつくっていこうという強い意思と熱い思いでお金をまわしていく長期投資運用から、殖えたお金をやはりより良い世の中のために使っていくことまで、とことん青臭くやっていく。

 そういった骨太さは世の中の歓迎するところである。 世の中が喜んでくれるからこそ、われわれの財産づくりもゆっくり着実に進んで行くわけだ。