NISA 口座

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 来年から始まる NISA (小規模投資非課税口座)の争奪戦が、証券会社や銀行の間で激しく繰り広げられている。 なにしろ、一人1口座と決まっているから、どの金融機関も顧客口座の抱え込みに躍起となっている。 なかには、口座を開設してくれた顧客にはキャッシュバックしている金融機関もある。

 オイオイちょっと待ってくれと言いたくなるのは、多くの金融機関がともかくも NISA 口座の開設ありきで突っ走っていること。 その先をどうするのか、さっぱり見えてこない。

 もともと、小規模投資非課税口座はイギリスで始められ、長い年月をかけて現在のスタイルにまで磨き上げてきたもの。 それを日本に導入したのが、NISA 口座である。

 その趣旨は、これまで投資には縁がなかった人々を中心に、できるだけ多くの個人に投資を通して財産形成してもらおうということ。 毎年一定の金額までの投資分には、値上がり益にも配当にも税を課さないことで、個人の財産形成をサポートするという仕組みである。

 英国での成功をみて、日本でもまずやってみようということで、来年から5年間という期間でスタートすることになったわけだ。 うまくいってくれて、5年間が英国のような恒久的な制度にまで高められると面白いのだが、ともあれ来年からの施行実績にかかっている。

 そこで問題なのは、NISA 口座はできたものの、どう仏作って魂入れるかだ。 まあ、5年という期間制限があるものの、その間に中長期投資の果実をたっぷり味わってもらわなければ、一般個人の投資は広まらない。

 したがって、NISA 口座獲得競争よりも、どんな中長期投資を提案していくかが重要となってくる。 その点、証券も銀行も一体全体どんな戦略を用意しているのだろうか? 

 たとえば、個別株の中長期投資アドバイスに関しても、専門家であるはずの証券会社の多くがより手数料が稼げる投信販売にのめり込んできた。 果たして、どこまで個別株のアドバイスを投資はじめての個人に提供できるものだろうか。

 投信を提案すればいい? 投信であれば、証券だけではなく銀行も窓口販売の実績を積んできている? またしても、ちょっと待ってくれだ。 日本の投信は4000本を超えるが、どれも手数料稼ぎの道具として出ては消え出ては消えの繰り返しで、平均寿命は2年半もない。

 そんなものを、これから投資を始めようとする個人にはめ込み営業された日には、せっかくの NISA 制度もたちまち無用の長物どころか、害悪になってしまう。 個人の預貯金マネーはますます永久凍土(ツンドラ)状態になる。

 一部に NISA 対応の投信が開発されているが、さあどこまで本格的な長期投資を展開できるものか。  それらが本物であれば、われわれと良い意味での競争ができる。