投信ビジネスの悩ましい現実

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 最近、投信ビジネスのベテランと話す機会があった。 彼は投信業界でも珍しい良識派の一人。 だから、折にふれて会ったりしている。

 良識派と書いたのは、日本の投信ビジネスを何とかして販売の論理から脱皮させ、受益者つまり個人投資家のためのものにしたい。 そういった願いを、彼はずっと持って既存の投信業界内で頑張っているからだ。

 残念ながらというか、どうにも変わらない日本の現実は、投信など金融商品のどれもが ”とにもかくにも業界の商売ありき” を相も変わらず前面に出していること。 商売としての儲けが先で、受益者の利益はいつも後回し。

 だから、投信業界でいえば次から次へと新しファンドを設定しては、投資家顧客に乗り換え営業を推し進めて販売手数料をがっぽり稼ごうとする。 その結果として、4000本を超す投信の平均寿命が2年半とかになっている。 投信の本来の姿である小口投資家の財産づくりをお手伝いするなんて意識は影も形もない。

 そんな投信が日本では当たり前と割り切っている個人投資家はまだいい。 彼らは次から次へと設定されるその時々のテーマを追いかけたファンドを、株式投資と同じ感覚で買っては売りを繰り返すことで、短期の儲けを狙おうとする。

 問題は、投信の時代だとか ”貯蓄から投資へ” とかの社会的な話題に乗って、初めて投信を買う人たち。 投信を買うんだからと、証券会社や銀行あるいは郵便局の窓口へおもむいた瞬間、儲け第一主義のビジネスに引きずり込まれてしまう。 いま一番人気のある、つまり一番販売しやすい投資テーマのファンドを、相場のピーク近くで買わさせられるケースが圧倒的に多い。 往々にして高値づかみすることになる。

 もちろん、投信販売の窓口ではお勧めする投信の可能性やリスクを、ていねいに説明してくれる。 そうはいうものの、手数料稼ぎが投信販売の目的であることは否定できない。 結果として、どこまで財産づくりに貢献できるか知れたものではない短命投信を買わされることになる。 投資リターンも期待したほど上がらない。

 初めて投信を買ったものの、苦い経験をして ”投信は難しい。 もうこりごりだ” といって去っていく投資家が、これまでどれほどいただろう。 そのあたりの反省をかけらも持たないのが、日本の投信ビジネスである。 だから、巨大な産業になる可能性は山ほどあるのに、いつまでたっても日本の投信は一部の個人投資家の間でしか広がらないのだ。

 そんな中で、投信本来の姿を個人それも預貯金しかやったことのない方々にお届けしようといって立ち上がったのが、さわかみファンドである。 それに、直販ファンド12本が続いている。 誰のための投信か、理念も目的も明確であり、その実績を地道に積み上げている。 それでも、いまだにマイナーな存在に甘んじているのが現実である。

 いつまで経っても販売の論理まる出しで平気な顔している既存の投信ビジネスに対し、ここに受益者のためのまともな投信があるんだよといった存在感を出せるステージまで、一刻も早く持っていきたいものだ。 それが、まじめな一般生活者のためでもあるし、投信ビジネスの本当の発展にもつながる。