安倍政権の成長戦略

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 アベノミクスの第3の矢が発表された。 各分野にわたって成長戦略が謳われているものの、どれも具体性に欠けるということで、株式市場中心に失望売りが広がった。

 おかしな反応である。 そもそも国が策定する成長戦略は総花的になるのがふつうである。 政治家は広く国民から票を獲得したいから、世間受けする政策を前面に出したがる。 それをベースに、役人が誤謬のないように戦略とやらを打ち立てるから、具体性に欠いた作文となって当然である。

 それなのに、具体性に欠けるといって、マーケットがわざわざ失望売りを出すなんて茶番もいいところ。 あるいは、失望売りにつながるほど期待感で買い上げてきたというのも、投資家として単純に過ぎる。 まあ、相場を追いかけては売買を繰り返す株式ディーラーにとっては、期待感で買い上がり失望で投げるのが仕事ともいえよう。

 もちろん、マスコミは報道材料に事欠かなくて、ゴキゲンだろう。 2週間前までは、アベノミクスで株高だ景気回復の兆しがみられるようになったと大騒ぎしていた。 それが、日経平均株価が2000円ほど下がったのを機に、いまや安倍バブルが崩壊したに論調が一変している。

 われわれ長期投資家は、いつでも地に足を下ろして考え、骨太に行動する。 株式市場が大幅下げしようが、それは先物中心に売りが集中しているからのこと。 売りたい人たちは、好きなだけ売ればよい。 だからといって、人々の生活はなくならないし、それを支える経済活動も一時として止ることはない。 なにを、そうも恐れるのか。 ここは断固として買ってやろう。

 ひとつずつ順を追って考えてみよう。 まず、安倍政権がデフレ脱却と景気浮上にありとあらゆる手を打っているのだから、それを応援しない理由はない。 生活者投資家としても、この下げ相場にはどんどん買い向かって、デフレ脱却や景気回復を下支えすべきだろう。

 次に、より豊かな生活を求めて富を創出し拡大するのは事業家あるいは企業であって、国や役人ではない。 そこには、冷徹でしたたかなビジネス戦略というものが、あって当たり前。 企業間の競争も激しいから、国の成長戦略といった作文を待つほど暇ではない。

 国がすべきは、日本社会が目指していく将来方向を定めること。 そして、徹底的な規制緩和と大幅減税を断行して、民間の事業意欲を高めることである。 国家戦略としての方向に予算を付け、第一歩の動きに水を向けてやるのは大事である。 あとは民間の事業拡大エネルギーに任した方が早いし、余分な税金投入も必要ない。

 日本社会の将来方向を示し、それに向けて国民全体が動き出すのが、まさしく国家戦略というものだろう。 国は予算のばらまきで利権拡大を図ったり、ゾンビ企業や団体を食わすのが仕事ではない。 民間も自助の精神で、将来のより豊かな生活を勝ち取っていこうとすることで、活力あふれた社会が出来上がっていく。

 国が何かしてくれるだろうと期待したり、棚から牡丹餅を待ち続けるなど、がっかりさせられるだけのこと。 それよりも、一人ひとりが事業家精神と投資意欲を高めていくことだ。