長期投資家の出番

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 この1週間、日本株市場は大荒れとなっている。 マスコミや専門家といわれる人たちは、平均株価で2000円ほどの下げをみて、それまでの強気論を修正するのに大わらわである。

 彼らは、相場動向を語るのが仕事。 それで、米国の中央銀行にあたる FRB が超金融緩和政策から出口戦略に舵を切り始めたとか、中国の景気動向が予想より弱めとか、株価の下げを裏付ける理由をあれこれ並べている。

 今回の下げなど、半年間で70%もの急上昇をしてきた相場のスピード調整に過ぎない。 なにしろ、これだけ急ピッチで上げてきたのだ。 どこかで一休みを入れてもいいのではといった雰囲気が株式市場には高まっていた。

 とりわけ、ヘッジファンドなど目先張りの投資家たちは、どこでドテンの売りを入れて儲けてやるか、そのタイミングを狙っていた。 そんなところへ、先週の金曜日の朝グラッときたのを見て、それいけっとばかり売りに転じたわけだ。

 高値警戒感が高まっていた株式市場だ、先物市場を使って一気に売り崩してやれば、多くの投資家は真っ青になる。 大慌てで売り逃げに走るのは目に見えている。 その思惑通り、日経平均株価は1100円超の大暴落となった。 ヘッジファンドの連中は面白いように大儲けしたはず。

 最近は機関投資家も個別株をていねいに拾うよりは、先物で日本株投資という簡便で大雑把な運用が増えている。 彼らはここまで先物買いで上昇相場についてきたが、慌てて今度は先物売りに転じた。 この1週間、先物中心に日本株市場が乱高下しているのは、そのためだ。

 まあ、下げの理由やヘッジファンドの動向など、どうでもいい。 株価が大きく下げたのは確かである。 その現実に対して、どう行動するかが長期投資家の仕事である。

 大事なのは、目先の相場見通しがどうのこうのよりも、将来への読みである。 相場など買う人が多くなれば上がるし、売りが殺到すれば下がるだけのこと。 いま売っているヘッジファンドだって、日本株市場が再び上昇に転じてくれば、即座に買いで儲けようとなる。

 そこで将来への読みだが、景気とか大きな話は横へ置いて、個々の企業に焦点を絞って先読みするのだ。 世の中や人々の生活に将来どれだけ重要な役割を果たしていくのか、それだけを考える。 その上で、この企業とこの企業は応援しなければとなれば、後は応援するに相応しいタイミングを選ぶだけだ。

 それは、今だろう。 景気は良くなってもらいたいし、雇用も増やしてもらいたい。 その方向で頑張っている企業の株価が大きく売られているのだ、応援しない理由はない。

 われわれのようなどっしりした長期投資家が増えれば、今回の下げもこれほど激しくなかったかもしれない。 なにしろ、ヘッジファンドなどが売りを仕掛けて株価を崩してくるのを、すかさず拾いに行くのだ。 そういった腰の据わった応援買いは、ヘッジファンドなど目先筋が一番嫌がる存在なのだから。