信託財産留保金、そもそもの考え

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 日本の投信はもちろんのこと、世界の投信ファンドでも信託財産留保金を設定しているところは、きわめて少ない。 その少数派として、さわかみファンドで50万円以上の解約に関しては1.5%の留保金をチャージさせてもらっている。

 お客様にとっては、例えば100万円の解約では1万5000円の留保金をお支払いいただくから、手取りは98万5000円となる。 (税は別) この1万5000円は、ファンド売却で発生するコストと、一般的には意識されやすい。

 そもそもの考え方が違う。 信託財残留保金は、ファンドを解約されるお客様が ”残る仲間に対して、ファンド資産を傷つけないために置いていってもらう迷惑料” という意味である。 迷惑料というぐらいだから、それはさわかみ投信(株)に対してではなく、ファンド資産に算入される。 つまり、ファンド仲間のものだ。

 運用サイドから説明すると、信託財産留保金の意義と重要性が理解しやすいだろう。 お客様からの解約にあたっては、その分の現金を用意しなければならない。 当然、保有株を売らなければならないが、こんなところでは売りたくないと思っても現金づくりが優先される。 それだけ、ポートフォリオを痛めることになり、残るお客様にとってはいい迷惑となる。

 あるいは、最近のさわかみファンドでは基準価額の上昇もあって、やれやれ売りや利益確定などの解約が毎日数億円ずつ出ている。 その解約代金を捻出するため、せっかく上昇相場が始まったばかりなのに、早くも高水準の売却を迫られる。 得べかりし運用益から鑑みると、ウーンとうなりたくなるところだが、解約はお客様の自由だから仕方がない。

 そんなわけで解約に伴っての信託財産留保金は、いささかなりともファンド資産を傷つけるにあたっての迷惑料で、きわめてフェアーなものである。 お客様にとっても、さわかみファンド保有の一部を解約したところで、残りはしっかり運用してもらいたい。 そのための留保金の支払いには納得がいくはず。

 もともと、さわかみファンドは本格的な長期投資で一般生活者の財産づくりをお手伝いさせてもらうために設定された。 ファンド資産は100%お客様のもので、その資産を大事に大事に育てていくことが、唯一にして最大の目的である。 そのためには、運用サイドはもちろんのこと弊社スタッフ全員が、持てる力をフルに発揮しなければならない。

 同時に、せっかくご縁をいただいたファンド仲間の皆様にも、みなで一緒にさわかみファンドを育てていくのだという意識を持ってもらいたい。 みんなの共有財産を大きく育てていくのに、みなで協力し合う。 それこそが投信の本来の姿である。

 したがって、信託財産留保金をコストなどという次元でとらえるのではなく、みなの共有財産を守るための安全弁と考えようではないか。