インフレに乗ろう

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 安部新内閣が発足した。 脱デフレを掲げ、2%の物価上昇を目指すという。 なにがなんでも日本経済を浮上させるのだとする強い決意は歓迎である。 経済のジリ貧には一刻も早く終止符を打ちたいのは、国民の誰もが願うところなんだから。

 景気回復を急ごうとする安部政権のリフレ政策は、裏を返せばインフレ政策でもある。 2%のインフレ目標を達成したならば、すみやかに金利を引き上げたりしてインフレが過熱しないようコントロールするというのだろうが、果たしてそう思うように運ぶものだろうか。

 脱デフレが奏効して、2%台の物価上昇を実現したとしよう。 その段階で金融の引き締めを急いだりしたら、すぐさま景気の回復トレンドは腰折れとなってしまう。 景気の足取りが相当に確りしてくるまでは、資金の過剰供給を続けざるを得ない。

 そういっている間にも、ひとたび火がついた物価上昇はどんどん裾野を広げていく。 なにしろ、これまでにばら撒いた大量の資金が水面下から続々と顔を出してくるのだから、ちょっとやそっとでは止めようがない。

 かといって、強烈な引き締めをやってしまうと、再びデフレの泥沼に落ちていくのは眼に見えている。 その微妙な舵取りと、インフレ熱の加速との綱引きとなるのだろうがが、歴史はいつも後者に軍杯を上げている。

 まあ、安部政権だけでなく先進国政府のどこもがインフレ政策に走っているのは否定しようがない。 国民の間でインフレ警戒心が伝統的に強いドイツがギリシャやスペインの財政支援に猛反対してきたのも、まさにそれを恐れてのことである。 そのドイツも不承不承ながら、 EU 中央銀行のインフレ政策を追認してきている。

 すぐにとは言わないが、そう遠くない先に日本も先進各国も、景気回復と抱き合わせで、インフレ昂進に直面しよう。 いずれの中央銀行も史上空前の資金バラマキをしているのだから、その帳尻合わせは必ずやって来る。

 われわれ長期投資家は、そこで慌てることはない。 きちんと選別して株を買っておけば、景気回復にもインフレにも乗って、資産を保全しつつ殖やしていける。 一方、ただ安全というところで思考停止して、預貯金や国債にしがみついている人達や金融機関は景気回復に乗り遅れ、インフレ昂進で大騒ぎするのだろう。

 さわかみファンドが設定来ずっと唱えているのが、アセットアロケーションの切り換えである。 すなわち、不況時から景気の相当な回復を見るまでは株式投資に集中する。 やるべきは投資対象銘柄の厳選であって、間違えても預貯金に資金を寝かしたり、低利回りの国債を買い漁ることはしない。

 景気回復は万人の願いである。 多くの人々の願いがかなうとともに、株式投資のリターンも後からついてくる。 その横で、預貯金の目減りを嘆いたり、保有国債で大きな損を抱え込む人達が多発するのは仕方ない。 願わくは、できるだけ多くの人々が ”不景気の時には、頑張っている企業の株を買っておく” という、お金の流れに逆らわない合理的な投資行動に参加してくれることだ。

 

 ブログへのコメントや質問への回答は、毎月第2第4水曜日20時より配信される生放送番組、「インベスターズTV水曜劇場」にてお答えしております。 当ブログでお答えすることはありませんので、ご注意ください。 インベスターズTV水曜劇場は http://www.investors-tv.jp でご覧になれます。

 

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